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『中央研究所紀要』 第1号

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第1号 [平成2年] (1991年1月18日発行)

行刑施設被収容者の作業適正配置に関する研究 PDF(1.22MB)
小林良作,宇都宮孝,小島賢一
【要旨】
受刑者個々に適した刑務作業を選択・付与することは受刑者の社会復帰に寄与するだけでなく,社会情勢の変化・技術的発展に伴う刑務作業への社会的な要請の変化に対応していく意味でも重要なことである。本研究では行刑施設被収容者の作業適正配置のための基礎研究を行うことを目的とし,具体的には適性項目として何を取り上げ,刑務作業を適性の観点からどう分類すべきか,そしてそれらをどう利用して判断を行うべきかについて検討した。
まず研究に先立って,全国52施設755工場の刑務作業担当者への適性に関する調査を行った。その結果,現在業種表にある約170職種の中の約半数程度が常態的に行われていることが分かり,更に中心的に行われている36職種について必要とされる適性を概観したが,工場担当者が作業の危険度,複雑さ,体力,対人接触の度合などを主な判断材料として受刑者の適・不適を考えていることが分かった。
次にこれに基づき適性として当面取り上げるべき評価項目を選択し,次のようになった。
1.他者への感染危険性の評価 2.事故時に予想される本人の身体への危険性の評価 3.薬品の使用度 4.機械の操作量(特に大型機械や複雑な機械) 5.体力の必要度の評価 6.肢体自由度と障害の評価 7.視力必要度の評価 8.色神健常度の評価 9.聴覚健常度の評価 10.資格必要度の評価 11.実施経験の評価 12.指先の器用さの評価 13.高所恐怖の有無 14.能力の必要度の評価 15.読み書きの評価 16.機敏さの評価 17.協調性の評価 18.指導性の評価
更にこれらの適性評価項目を基準として刑務作業の見直しを行い,140作業を配役先として選択した。なお便宜的に自営・生産作業と大別し,扱う対象毎に細分類したが,適性が中心となっているために処理上はそれぞれの作業は独立したものとして扱われている。
最後に判断システムを試作し,その適切さを確認した。その手続きは個人毎に全職種に基礎点0を与えた上で,絶対必要とされる適性を個人が持っていない場合には,-999を与え,不適当な場合には若干のマイナス点を,適当な場合には若干のプラス点を与え,最終的に高得点を付与された作業を列挙する形をとった。なお作成過程において,各適性評価項目の重みを調整し,新たに関連作業表を導入した。関連作業表とはある作業に習熟している場合,それに関連する作業にもある程度の加算が行われるようにしたものである。
試作された判断システムはそのまま実用になるものではない。実用に向けては使い勝手を改良する必要があり,施設固有の作業などを組み込むことを行わなければならない。しかし,今後の作業適正配置を考える上では十分に議論のたたき台になるものと思われる。
矯正処遇評価研究へのLISRELの応用 PDF(484KB)
津富宏
【要旨】
刑事司法機関による犯罪者・非行者の処遇は,大別して,1)犯罪性を変容させようとする治療的処遇と,2)犯罪性の根本的な変容ではなく犯罪行動の発現を抑制しようとする威嚇的処遇の2つに分けられる。処遇のねらいによって,2種の処遇を区別した上で,矯正処遇を評価するためには,目に見えない変数,いわゆる潜在変数を数的な処理の対象としうる統計手法が必要である。
共分散分析は,この必要に応える,目に見えない潜在変数と目に見える観測変数を一つのモデルにとりこんだ統計手法であり,個々のモデルの推定は,LISREL,EQS,EzPATHなどのコンピュータ・パッケージを用いて行われる。
そこで,共分散分析を用いて,威嚇的処遇を表現したモデル(モデル1)と,治療的処遇を表現したモデル(モデル2)をモデリングし,潜在変数を想定しない回帰分析によるモデル(モデル3)と対比した。
共分散分析におけるパラメータ推定の基本的手順として,モデル1,2について,モデル識別の条件,手計算によるパラメータ推定の方法,LISRELによるパラメータ推定の方法を概説したのち,3つのモデルを推定したところ,モデル1では処遇効果が認められない一方で,モデル2,3では処遇効果が認められた。
いずれのモデルもデータは共通であるから,処遇効果に関する結論の違いはモデリングの違いによるもので,この結果は,矯正処遇の効果を評価する場合には,その処遇が犯罪性を変容しようとしているかいないかを明確にモデリングする必要があることを示している。
考察として,共分散分析による,矯正処遇評価研究のモデリング例を例示し,現場職員によるLISRELの柔軟な応用を求めた。
施設被収容少年の文章完成法テストにおける反応傾向について-特に家族領域に関する刺激文に対して PDF(730KB)
酒井敏夫
【要旨】
非行発生基盤としての家族の特性をみるためのアプローチの一つとして,文章完成法テストの家族領域に関する刺激文に対する反応から,非行進度別の反応傾向と,その反応傾向から家族領域における認知構造を明らかにしようとする。結果は両親に対する反応の傾向としては,各群とも親和反応が多いが,非行進度のもっとも深い少年院群では父を「きらい」「うるさい」といった拒否反応が多いのと,親を「尊敬する」「信頼する」といった規範モデルとなる反応が少ない。両親のいずれかが欠損している離別反応は非行群に多く,欠損家庭が一般群に比較して多いと考えられる。
家庭における帰属意識としては,各群とも,家を心理的に肯定する反応や,家の中での自分を肯定する反応が多いが,少年院群では同時に家を心理的に否定する者や,家の中での否定的自己を語るものが他群より多い傾向があって,非行進度の深い少年院群に家庭における帰属意識が希薄なものが多いと思われる。
以上のような結果が見出されるが,文章完成法テストの反応文は,回答が限定されている質問紙法と異なり,極めて多様であり,ある事象について反応されていないからといって,その事象が否定されるものでない。従って,統計処理になじまない面もあるので,その解釈にあたっては注意が必要である。
イベント・ヒストリー・アナリシスの成行き調査分析への応用-比例ハザードモデルを用いて PDF(425KB)
津富宏
【要旨】
成行き調査は,矯正処遇を客観的に評価し,処遇改善の手がかりをうるための,貴重な情報を与えてくれる。残念ながら,従来の成行き調査分析では,一定時点までの再入の有無の分析に限られ,再入の順序や時期といった,時間にかかわる情報を分析することはできなかった。
イベント・ヒストリー・アナリシスは,時間の流れ(ヒストリー)の中で生じるできごと(イベント)の生起する過程を,確率過程としてモデリングすることにより,時間にかかわる情報を利用可能とする統計手法で,再入の順序や時期までも分析の対象とすることができる。
イベント・ヒストリー・アナリシスで,モデリングの対象となるのは,ある時点までにイベントを経験していない個体が,その時点にイベントを経験する瞬間的確率(ハザード・レイト)で,成行き調査の場合,ハザード・レイトは,ある時点までに再入していない出所者が,その時点に再入する瞬間的確率である。このハザード・レイトを,再入に影響を与えると思われる要因(共変数)の関数としてモデリングすることにより,処遇効果の検証が行われる。
処遇効果の分析には,ハザード・レイトを,時間の効果を表わす関数と,共変数の効果を表わす関数の2つの部分に分離してモデリングする,比例ハザードモデルが適している。このため,比例ハザードモデルにおいては,時間の効果を表わす関数を特定化せずに,Coxの偏尤法により,共変数の効果をバイアスなく推定できる。このモデルを,少年院から実際に得られたデータヘ適用し,処遇効果を検討する方法を,統計パッケージLIMDEPの利用法も合わせつつ示した。
イベント・ヒストリー・アナリシスは,成行き調査の最良の分析手法であるばかりでなく,収容者のライフ・ヒストリーの分析手法として有力である。
わが国における女性犯罪の研究(その1) PDF(593KB)
佐藤晴夫
【要旨】
明治以来戦前までのわが国の「犯罪研究」を概観すると,まず犯罪研究は犯罪統計から始まった。明治初めから20年代にかけて,犯罪現象を犯罪統計に基づいて論ずる報告や雑誌が次々に刊行されている。
その後,西洋文献の紹介,刑法学者・法曹家・行刑の実務家などによる犯罪の研究,それに医学・精神医学・心理学・社会学・教育学の各方面からの犯罪研究も加わり,研究活動はますます活発となり,昭和期に入ると一層の盛行を見せることになった。
しかし,これらの研究も大部分は男子の犯罪に関するものであり,女性犯罪に関する戦前の研究はまことに乏しい。
女性犯罪の研究の対象を大まかに見ると,女性犯罪と女性特有の感情や生理との関係,女性に累犯が多い理由,女性の犯罪数が男子に比して著しく少ない理由,女性犯罪と女性の社会的,経済的地位との関係等が採り上げられている。
戦前,女性犯罪の研究が不振であった理由は,筆者の個人的な推察ではあるが,良妻賢母主義の女性像から,女性と犯罪の関連が薄いという社会的観念が存在したこと,事実上も,女性の犯罪者は男子の10分の1程度に過ぎず,罪質も世人の関心を集めるようなものが少なかったこと等によるものと考えられる。
女性犯罪一般と違い,売春と売春婦に対しては,社会の関心は強く,これに関する研究も盛んであった。その研究上の立場は, (1)一つの風俗として客観的に観察するもの, (2)人道的,宗教的見地から売春の撲滅を目指すもの, (3)資本主義社会が持つ貧困という社会現象を解明しようとするもの, (4)売春を取締まる必要から研究するものなどに大別される。
女子少年院在院者の家族画からみた特徴について PDF(864KB)
酒井澄,打田茉莉,鈴木義子
【要旨】
本研究では,女子少年院在院者の家族画の特徴を,家族と友人についての質問紙調査やSCT等との関連で捉えようとした。家族画全体を眺めた時に,マンガ絵が非常に多い印象を受けたので,今回は,家族画をマンガ絵と写実絵という観点から,258名を対象に分析を行った。その結果を要約すると次のとおりである。
マンガ絵には,頭部顔面像が出現しやすいこと,家族画の中に自分をいれる場合,端に描く率は写実絵を描く者の方に多いこと等である。また,質問紙調査との関連では,マンガ絵を描く者の方が,父親に相談しようとしない者及び服従しようとの構えの乏しい者の率が高く,母親に対しては,親に依存し,相互に受容し,されているという感じを抱いている者が多い。SCTとの関連では,マンガ絵を描く者に,家がいやになる原因は親のせいとする者と同時に,自分のせいと考える者も多いのに対し,写実絵を描く者には中立的記述が多い。
考察としては,断定的なことはいえないものの,マンガ絵を描く者と写実絵を描く者とを比較すると,前者は,いわゆる女子の非行少年の典型タイプであり,母親には親和感を示すものの,父親との関係が不良なために,規範意識が不十分な者が多いように思われるのに対し,後者は,母親よりもどちらかというと父親に依存する。ただし,意思表示が明確に行えず,対人面で萎縮したり,幼稚な行動を取りやすく,非行も逃避的な色彩がうががえる。
エイズのカウンセリングをめぐる諸問題-矯正施設での実践を前提として PDF(918KB)
小島賢一
【要旨】
幸いにも我国はエイズに関して現在までのところ罹患率の低い地域となっているが,潜在的なハイリスク集団を対象としている矯正施設において,その対応を準備する必要があることは言うまでもない。本研究においては矯正施設でのカウンセリングに焦点を当て,エイズに関連した問題を扱い,心理的な支援を行う上での留意点について述べる。
慢性疾患者へのカウンセリングを行う上では特にカウンセラー側にもある程度の疾患への理解が必要となり,例えば不安の内容に共感したり,程度を判断したりする場合に知識の有無は大きな意味を持つ。そこでエイズヘの基礎知識として,病因,感染経路,感染力,症状,検査,経過,現在の治療方法などの概略を示した。
またエイズ罹患は完全な治療方法がない以上,末期ガン患者に対する告知や心理的支援に通じるものがあるが,周囲への感染の危険性があること,罹患経過に対して社会的な偏見も多く存在する点で異なってもいる。こうした点で感染不安・検査不安・告知・キャリアの心理・発症後の心理などエイズに関連する固有の問題が生じやすく,これについて述べた。
更に職員・施設の対処として準備しておくべき事項(啓蒙,告知体制,治療体制,予防体制,通告義務など)についても基本的なところを指摘した。
最後に一般病院で行ったエイズ感染事例のカウンセリングについて報告し,心理的支援方法を具体的に考える材料とした。
[報告]矯正管区との共同研究 PDF(942KB)
藤原正,奥村晋,高塩武治

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