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『中央研究所紀要』 第2号

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第2号 [平成4年] (1992年3月16日発行)

被収容者の更生意識に関する研究-矯正管区との共同研究 中間報告 PDF(1.33MB)
藤原正,小島賢一
【要旨】
本稿は,研究の中間報告である。結果の概要は次の通りである。
(1) 成人,少年を問わず,大半の被収容者は更生を望んでいるが,更生への気持ちや自信は,受け入れる家族関係をよいと認知するほど,施設処遇への態度が肯定的なほど,年齢が増すほど,入所回数が少ないほど出てくる。
(2) 成人においては暴力団に関与するほど,更生の意思や自信を失う。また社会から切り離されている被収容者が,収容生活と社会生活にどれだけ関連性を感じているかが,重要なことが分かった。
(3) 少年においては社会復帰後の交友を真剣に心配するほど更生への意思や自信を示す。
(4) 各要因からの影響の受け方については,刑務所の場合は処遇分類のA,B,L,W級の違いによって,また,少年矯正施設の場合には少年院と鑑別所によって若干の相違が見られた。
タイ王国少年院在院者の家族認知について-家族画による類型化とその臨床像の検討 PDF(1.54MB)
奥村晋,石黒裕子,藤掛明
【要旨】
本研究は,タイ王国の在院者の描いた家族画を分析することで,彼らの抱いている家族像の特徴を,日本との比較において,探ることを目的とした。
まず,家族画の徴標の出現調査を行い,それを同様の日本の調査結果と比較した。次に家族画の主要な徴標の出現のパターンを,林の数量化Ⅲ類により分析し,男女それぞれに4類型(成分)を抽出し,命名を行った。さらに,各類型の典型事例に対して臨床的な検討を加え,先の命名との対応関係を見たがら,各類型の意味づけを行った。
最後に,本研究の家族画の類型を,本研究とほぼ同様の方法で類型化している日本の研究結果と比較し,その共通点と差異点について考察を行った。また,併せて,類型化と臨床的検討の過程で,日本の家族画解釈仮説と異なり,タイ王国特有の意味があることが明らかとなった徴標について指摘した。
タイ王国の家族画で特徴的であったものは,「描かれた家族に動きがあるが,非同一の動き方をしている画」のように,家族像の各員の結び付きが緩やかな状態にある場合は,日本とは対照的に,比較的肯定的な意味合いがあることであった。また,他に,人物の棒表現や,戸外の家族像の描出にも,日本のような否定的な意味合いはあまり見られなかった。タイ王国では,投影された家族像に,人間関係での結び付きの緩やかさや,住居環境の影響があることが示唆された。
日本とタイ王国における家族に関する調査結果の比較 PDF(1.16MB)
奥村晋,小島賢一,遠藤隆行
【要旨】
日本の非行少年,一般少年及びタイの非行少年を対象として実施した,親子関係に関する質問紙調査の結果の比較を通じて,両国の親子関係の特徴や問題点について考察することを目的とした研究である。
質問紙は,父親に関する質問,母親に関する質問各10問から構成されており,そのうち男女に共通する質問18問に関して,両国の非行少年について対数線形モデルを用いて有意差を検定した。質問の内容は,依存度,理解度,関心度,従順度,全般的な関係の良さなどである。
分析の結果,日本とタイとでは,今回調査した全ての面で,非行少年の親子関係に大きな差異があることが明らかになった。日本の非行少年の親子関係の特徴は,依存的,相互無理解,親の関心の低さ,反抗的,関係木良であり,タイの非行少年の親子関係の特徴は,自立的,相互理解,親の関心の高さ,従順的,関係良好である。こうした特徴は,父親,母親に限らず,また,男女に共通したものである。特に日本の非行少年の依存性の強さは,日本の一般少年にも認められることから,日本の青少年に共通する特徴であると考えられる。このように,親子関係の国際比較研究には,他国との比較を通じてわが国の親子関係の特徴や問題点が明確になるという意義がある。
なお,ほとんどの質問で性差は認められなかったが,両国に共通する傾向として,父親と男子少年との相互理解の強さ,男子少年の父親への依存の強さがあげられる。
女子少年院在院者の生活意識調査について PDF(883KB)
水野周,山田聖都,遠藤隆行
【要旨】
90項目の質問から構成される生活意識に属する様々な内容の質問紙調査票による調査を,愛知県内の女子高校生及び全国の女子少年院在院者に実施し,結果を比較することにより,非行少年の生活意識の特質を明らかにすることを目的としている。
質問項目を13のカテゴリーに分類し,結果を比較したところ,ほとんどのカテゴリーにおいて,一般群と非行群の間に有意差が認められ,下位項目においても,多くの場合,回答分布に有意な差が存在した。
差異が存在する理由として,年齢構成や地域差によるもの,非行群が拘禁状態に置かれていることによるものなども考えられるが,これらの要因を考慮しても,なお,女子非行少年本来の特徴であると推定される差異も認められた。特に,親子関係の不和,大人や男性に対する不信,摂食行動に関する異常などの問題は,女子非行少年の方に高い割合で存在している。また,女性性については,非行少年の方が高い値を示している。なお,発動性と他者を拒絶する態度においては,両群に差は認められなかった。
今後,研究を進めるにあたっては,他の条件を同一にした上で調査を実施し,女子非行少年本来の特徴だけを抽出して比較していきたい。
少年非行発生と地域特性の関連について PDF(1.03MB)
原俊郎
【要旨】
各地の少年鑑別所に勤務した経験から,少年非行には地域的な特性があるのではないかと感じ,本研究を始めた。
最初は地域の種々の社会,経済,文化等の指標と少年非行との関連を考えたが,地域の種々の指標はマクロなもので,すっきりした関連は出てこなかった。興味の対象を全国規模においたため,入手できたり,使用できる資料には限界があり,結局,暗数の問題を無視し,全国の家庭裁判所で扱う事件数を主たる分析の対象とした。
研究の方向として,少年非行の量的な問題に主力を置き,その量的な問題を抑制する要因は何かといったことに焦点をあて,研究を進めた。少年非行を抑制する要因として,警察,家庭裁判所等の司法関係機関の活動(外的な非行抑制要因)と地域の文化的な違いに由来すると思われる,その地域に居住する人々の人柄の違い,特に少年非行に対する許容性,抵抗感の乏しさ等の問題(内的な非行抑制要因)の二つを考え,その双方から分析を試みた。前者については,少年非行発生率と観護措置率の関係を分析することで,全国の47都道府県のここ10年の非行発生状況を10のタイプに分類した。後者については,全国的な分析はむずかしかったので,非行発生率の高い関西と非行発生率の低い中部を比較・検討し,全般的なエネルギーの高さが非行発生率の高さと関連があるのではないかといった推論を導きだした。
現代青年の生活意識についての一考察-遠藤他の論文へのコメント PDF(248KB)
清水將之,奥村透
【要旨】
中央研究所紀要の本号に掲載されている遠藤他の論文『女子少年院在院者の意識調査について』に対して,青年精神医学の立場から討論を行った。
遠藤他の論文では,清水と奥村が作成した主として摂食障害の疫学調査を目的としたアンケート用紙を用いて,女子少年院に在院する青年中期女子の生活意識と清水,奥村の調査による一般高校生女子の生活意識との比較検討が行われている。そこでは自己像,交友関係その他多くの項目において少年院群が一般高校生群よりも統計的有意差を持って高い問題性を示していることが明らかにされている。
一般に,非行は社会学的規範によって先験的にネガティブなものという評価を与えられている。そのような視点に立てば,これは当然の帰結であると見なされるのであろう。しかし多くの研究を集積した上でなお,非行の本質が解明されたとは言えない現状にあることも忘れてはならたい。非行が,社会学,犯罪学,精神医学,教育学,心理学等,多くの領域に跨がる学際問題であることを考えると,今回のネガティブな所見は非行のある一面を捉えたものと取り敢えずは考えるのが妥当であると考えられる。非行は青年期という人格の成熟過程と重積して生じてくる問題であるので,その解明には青年精神医学が今後大いなる協力を果たすべき使命を担っているものと考える。
タイ王国における家族と少年非行 PDF(427KB)
犬塚石夫

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